中国におけるデジタルプラットフォーム事業者の規制強化―独占禁止法を中心に―

執筆者 川島 富士雄(神戸大学)
発行日/NO. 2022年3月  22-J-009
研究プロジェクト 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第V期)
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概要

2020年12月、中国共産党中央政治局会議及び中央経済工作会議が「独占禁止を強化し、資本の無秩序な拡張を防止する」との重点政策を打ち出して以来、アリババ、テンセント等、従来、中国において独占禁止法(以下「独禁法」という。)執行の対象とならない「聖域」とも目されてきたデジタルプラットフォーム事業者を中心に活発な同法規制が展開されている。本稿ではまず、こうした規制強化の背景を検討するとともに、同事業者に対する独禁法規制の具体例を中心に紹介・分析する。さらに、同事業者に対するネットワーク安全法(サイバーセキュリティ法)等、他の法令に基づく規制動向も紹介し、それらとの比較で独禁法規制がどのような傾向及び特徴を有しているか明らかにする。本稿における検討は、デジタル貿易分野における多国間ルールの形成に向け、その方向性に対し大きな影響を与えうる中国における関連規制の現状を把握する基礎作業として実務的意義が認められる。