2011年都道府県間産業連関表の作成とその概要

執筆者 新井 園枝(経済産業研究所)
発行日/NO. 2022年1月  22-J-003
研究プロジェクト 地域別・産業別データベースの拡充と分析-地域間の分業と生産性
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概要

経済産業研究所(RIETI)の「産業・企業生産性向上」プログラムの「地域別・産業別データベースの拡充と分析」プロジェクトにおけるR-JIPデータベースの付帯情報として、2020年に47都道府県を繋げた2005年都道府県間産業連関表を作成 し公表した。その結果、都道府県間の所得分配や生産性格差の決定要因として、生産要素の賦存や生産技術波及、その結果として生み出される地域間の分業構造に注目することも可能となった。そこで本研究では、さらに地域間構造の変化が時系列で分析可能となるように2011年都道府県間産業連関表を作成した。本研究では2005年同様都道府県の表を同一概念・部門に統一し、それらを繋げて都道府県間産業連関表として作成したものである。部門については2005年同様に「本社」部門を設けて本社サービスの分析も可能にしている。また今回作成した2011年都道府県間産業連関表は東日本大震災の年に当たる。その年の各都道府県の産業構造が見て取れる。また本社活動にしても今回は2005年表同様に部門設定を行った。本社サービスがどのような流れになっているかも分析可能となっている。本社活動の他地域へ与える影響や国内の地域間分業構造は近年どのように変化し、それは地域間の生産性格差を縮める方向に作用したのかなど地域間・産業間の取引構造も含む地域間産業分析が可能となったと言える。

経済産業省が2005年表を最後に地域間表の作成をやめてしまったのは残念であるが、それゆえ2011年都道府県間産業連関表の作成は地域間の結びつきを分析する唯一のデータであると言える。2011年は日本経済でも大きな影響があった東日本大震災の年に当たる。バブル経済から立ち直った日本経済が東日本大震災により日本経済が受けた影響、なかでも地域経済に与えた影響は大きい。またサプライチェーンの断絶は国内のみならず海外にも大きな影響を与えた。2011年の全国産業連関表からはその時の日本の経済構造の分析が可能であり、2011年都道府県間産業連関表からは、さらに詳細に地域を通じた日本の経済構造に与えた分析を可能とする。

2005年、2011年と2時点における都道府県間産業連関表からは地域構造や結びつき等の変化、更には、今後、期間を空けた複数の時点でこうした都道府県間産業連関表を作成することができれば、国内の地域間分業構造の変化についても分析可能になり分析の拡大が期待される。