ノンテクニカルサマリー

2011年都道府県間産業連関表の作成とその概要

執筆者 新井 園枝(経済産業研究所)
研究プロジェクト 地域別・産業別データベースの拡充と分析-地域間の分業と生産性
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

産業・企業生産性向上プログラム(第五期:2020〜2023年度)
「地域別・産業別データベースの拡充と分析-地域間の分業と生産性」プロジェクト

都道府県間産業連関表は民間企業による研究や研究者による作表がされているがそのほとんどは公表されてはいない。そこで「本社」部門を設定して2020年に作表公表した2005年都道府県間表に続き、今回2011年表も公表することとする。都道府県間産業連関表ではそれぞれの産業や都道府県の結びつきが一目で見ることができる。

今回対象となる2011年は東日本大震災により地域経済が大きなダメージを受けた年であり地域構造が大きく変わった年である。前回作成した2005年都道府県間表と2011年都道府県間表を比較してみると、2011年の生産額は東日本大震災の影響もあり-3.0%の減少となった(第1図)。福島県-14.3%、次いで宮城県-12.1%、鳥取県-11.5%、長野県-10.3%が2桁台の減少となり31都道府県が減少となった。一方、16府県が増加となり、中でも大分県は13.1%の2桁台の増加となった。生産額でみると東北地域は殆どの県で生産額が減少した。

第1図 都道府県の生産額の変化と本社部門の生産額の変化
第1図 都道府県の生産額の変化と本社部門の生産額の変化

産業連関表ではそれぞれの生産活動にどの程度影響を及ぼすか逆行列経緯数を用いて生産波及を求めることができる。その係数を用いればサプライチェーンの分析が可能となる。第2図は2011年の都道府県別の平均波及力を見たものである。図の右上は波及力が大きく、自地域当該部門以外の波及が大きいことから他部門や他地域への生産に与える影響が大きい県といえる。右上のエリアにある宮城県をはじめとして山梨県、奈良県、埼玉県、長野県、鳥取県は生産波及力が大きくその波及は自地域当該部門以外への波及が大きい県である。これらの県は生産波及の大きい部門の生産活動があり、その地域の部門は他産業や他地域に与える影響が大きい。一方、沖縄県をはじめとして大分県、広島県、愛媛県、岡山県、山口県などグラフの左下に位置する県は生産波及力が小さく、他産業や他地域に与える影響も少ない。

第2図 生産波及力と自地域当該産業以外に与える影響
(自地域当該産業以外及び他地域に与える影響:自地域産業の交点の値を1にして他県の値を計算したもの)
第2図 生産波及力と自地域当該産業以外に与える影響