新型コロナと在宅勤務の生産性:パネルデータ分析

執筆者 森川 正之 (所長・CRO)
発行日/NO. 2021年8月  21-J-041
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概要

本稿は、2021年7月に実施した独自のサーベイに基づき、新型コロナ下における在宅勤務の実施状況や生産性について、1年前に実施した調査結果と比較しつつ分析した。その結果によると、第一に、在宅勤務の平均的な生産性は依然として職場の生産性に比べて20%程度低いものの、この1年間に10%ポイント以上改善した。1) 在宅の生産性が低い人の退出によるセレクション効果、2) 在宅勤務の生産性が低かった人の底上げを中心とした学習効果が半々程度の寄与となっている。第二に、在宅勤務で節約された通勤時間を仕事に充てることを通じた労働投入時間の増加は、在宅勤務実施者の総労働投入時間の3.0%、雇用者全体の総労働投入時間の0.7%に当たる。すなわち、節約された通勤時間の労働時間への充当を考慮しても、在宅勤務の生産性についての結論は本質的に変わらない。第三に、新型コロナ終息後も現在と同程度の頻度での在宅勤務を希望する人が大幅に増加しており、新型コロナを契機に在宅勤務がアメニティの高い働き方として定着する可能性が高まったことを示唆している。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:21-E-078