睡眠改善アプリを用いた健康経営施策が生産性に与えた影響:RCTに基づく検証

執筆者 川太 悠史 (早稲田大学)/黒田 祥子 (ファカルティフェロー)/大湾 秀雄 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2021年8月  21-J-040
研究プロジェクト 働き方改革と健康経営に関する研究
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概要

本研究では、製造業企業一社で実施した睡眠改善プログラム(ランダム化比較試験)が、睡眠改善を通じて従業員の生産性の向上にどの程度影響を及ぼすかを検証した。睡眠改善プログラムでは、応募者を無作為に介入群と対照群に分け、介入群には非接触型センシングデバイスを支給し、3か月間の睡眠の計測を行った。プログラムは睡眠データの計測とともに、参加者に対して健康アプリが日々の睡眠に対するアドバイスを行い、睡眠改善を促す内容となっている。分析の結果、以下のことが明らかになった。第一に、計測期間における、業務量の増加や在宅勤務日数の増加などが寝つきの悪化や中途覚醒を引き起こしている可能性が認められたものの、これらの要因を制御したうえで、プログラム実施前と実施後の介入群と対照群を比較したところ、介入群に睡眠改善の効果が認められた。第二に、同群のプレゼンティイズム(生産性)が統計的に有意に改善していることが確認された。プレゼンティイズムへの効果は、ITT、LATE、睡眠改善を通じた2SLSいずれの推計方法を用いても、最終的な効果規模は同程度であり、睡眠改善プログラムが、真面目に取り組んだ参加者の睡眠改善を通じて生産性を押し上げていることが確認できた。これらの結果は、情報技術の利活用により睡眠改善行動を促すことで実際に睡眠の未充足は改善され、生産性の回復が見込めることを示唆する。