執筆者 | 渕 圭吾 (神戸大学) |
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発行日/NO. | 2021年8月 21-J-038 |
研究プロジェクト | 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第V期) |
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概要
本稿は、近年提案され、また、いくつかの国によって実際に導入されたデジタル・サービス税(Digital Services Tax)の法的仕組み及びその問題点を紹介するとともに、なぜこのような租税が提案される余地があったのか、ということを分析する。本稿は、以下の点を指摘している。第一に、デジタル・サービス税は、従来の国際課税の枠組みを修正するのではなく、その枠組みからはみ出すような、その性質が曖昧な租税である。第二に、デジタル・サービス税には、米国通商代表部の報告書で示されているような様々な理論的・実際的な問題(その性質が曖昧であって他の種類の租税との重複課税をもたらすこと、所得課税・消費課税・資産課税のそれぞれについてこれまで理解されてきた課税管轄権の限界を超えて課されること、執行が国家と企業との間の交渉に依存すること等)があり、基本的には取るに足らないものである。第三に、従来の法人税や消費税は消費者が目に見える対価を支払わないで行う消費活動をうまく捉えることができていなかったので、この問題点を突いている限りにおいては、デジタル・サービス税には一理あるとの評価が可能である。