機関投資家によるエンゲージメントの動機および効果

執筆者 日高 航 (東京工業大学)/池田 直史 (日本大学)/井上 光太郎 (東京工業大学)
発行日/NO. 2021年7月  21-J-036
研究プロジェクト 企業統治分析のフロンティア
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概要

筆者たちは、大手機関投資家3社からエンゲージメント活動(投資先企業との対話と交渉)の情報提供を受け、通常は観察できないエンゲージメント活動に関する機関投資家側の動機、エンゲージメントの内容と効果を直接検証している。2017年の改訂スチュワードシップコードにより機関投資家にとってモニタリングに関するコスト・ベネフィットが大きく変化し、本格的エンゲージメントが開始されたタイミングを活かし、2017年から2019年の期間ののべ3千回以上のエンゲージメントを分析対象とした。主要な結果としては、各機関投資家は自らの株式保有比率が高く、かつガバナンス体制に問題がある企業に対してエンゲージメント活動を行っている。エンゲージメントにより、その対象企業では社外独立取締役比率と役員持株比率が上昇する一方で、政策保有株比率が減少し、買収防衛策が廃止されるなどガバナンスの改善が確認できた。またエンゲージメント先企業では、ROEまたはTobin's Qの上昇が観測された。これらの結果は、機関投資家のエンゲージメントは投資先企業のガバナンスと機関投資家の投資パフォーマンスを共に改善しており、企業の効率性改善に資する行動と評価できる。