IT化と生産性、国内外の企業内資源配分

執筆者 金 榮愨 (専修大学)/乾 友彦 (学習院大学)
発行日/NO. 2021年3月  21-J-013
研究プロジェクト 東アジア産業生産性
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概要

2020年からの新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、テレワークをはじめとして企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展が喫緊の課題となっている。DXを推進するためには、その基盤となるITシステムの基盤を整備する必要がある。IT化の進展が企業の生産性の改善に貢献することは多くの先行研究で確認されているが、この生産性の改善は新製品の開発、企業内資源配分の改善等によってもたらされるものと考えられている。

本研究ではIT化の進展と生産性の関係について、日本の企業、事業所のデータを使用して検証した。具体的には「経済産業省企業活動基本調査」、「工業統計調査」、「経済センサス-活動調査」、「海外事業活動基本調査」を企業レベルで接続して、企業内におけるIT化の進展と国内外における生産、調達の関係を検証した。分析の結果、企業のIT化の進展と、生産性体制の国際化(海外関係会社への輸出額及び海外関係会社からの輸入額、海外事業所の設立、海外における研究開発の実施)にプラスの関係があることが示された。またIT化が進んでいる企業においては、国内の生産性の高い事業所の生産が拡大し、逆に生産性の低い事業所の生産が縮小することを示唆する結果が得られた。以上の推計結果から、IT化の進展している企業は国内外の生産体制を再編成することを企業全体の生産性を向上させているものと推察される結果が得られた。