地域間生産性格差と生産要素の資源配分

執筆者 川崎 一泰 (中央大学)
発行日/NO. 2021年2月  21-J-005
研究プロジェクト 地域別・産業別データベースの拡充と分析-地域別・産業別生産性分析と地域間分業
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概要

わが国の地域間の人口移動は地域間所得格差の縮小に伴い収束に向かいつつある。こうした現象に対してBarro and Sala-i-Martin(1992)をはじめとした実証研究がすすめられ、人口移動の収束が限界生産性の均等化によるものかが論点となっている。この論争の中で、持田(2004)では、人口などの生産要素の移動は限界生産性に加え、財政余剰も影響を及ぼしていることを指摘している。Kawasaki(2013)では、日本の人口移動の収束は地域間格差によるものではなく、財政を通じて行われる再分配によるものであると結論付けている。また、日本の社会資本の生産力効果については宮川・川崎・枝村(2018)で、地域内での資源配分の移動に伴う生産性向上に焦点を当てた実証分析が行われ、社会資本が地域内の労働移動を促している可能性を示唆するものである。

本稿では、Kawasaki(2013)のフレームを拡張するとともに、R-JIPデータベースを使い、地域間の生産性格差を計測し、社会資本を含む資源の効率的配分を示すことを目的とした研究を行った。分析の結果、大都市の生産性が相対的に高く、市場メカニズムに従うと大都市に労働力も資本も集中することになることが明らかになった。これを公共事業や立地規制などで大都市への集中を抑制してきた。財政制約が厳しい中、今後は大都市を抑制するのではなく、地域の生産性を引き上げる政策が求められているものと考える。