第3波直前の我が国における、コロナ禍でのうつ状態と自殺念慮に関するリスクの検討:「新型コロナウイルス流行下における心身の健康状態に関する継続調査」第一回調査結果より

執筆者 宗 未来 (東京歯科大学)/関沢 洋一 (上席研究員)/越智 小枝 (東京慈恵会医科大学)/橋本 空 (ユナイテッドコミュニケーション株式会社)/傳田 健三 (平松記念病院)
発行日/NO. 2020年12月  20-J-044
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概要

背景:新型コロナ感染症による生活様式の変化や大幅な経済の縮小といった“コロナ禍”に巻き込まれる形で、社会全体が先の見えないストレスに晒される日々が続いており、国民の心身の健康状態の悪化が危惧される。エビデンスに基づいたメンタルヘルス対策の前提として、実態把握とその分析が急務である。

研究方法:経済産業研究所が実施するインターネット調査「新型コロナウイルス流行下における心身の健康状態に関する継続調査」のうち、2020年10月末に実施した第1回調査結果を用いて、うつ病や自殺念慮と、複数の危険因子(経済状況、他者との交流、生活の規則正しさ、外出や運動などの諸活動など)との間の関係性を明らかにした。うつ病診断のために開発された質問票であるPHQ-9の得点が10点以上の場合をうつ病と定義し、PHQ-9の問9の得点が1点以上の場合を自殺念慮があると定義した。16,642名の有効回答者について、各共変量を含む多変量ロジスティック回帰分析により、調整後オッズ比を算出しその考察を行った。

結果:世帯収入や預貯金額の少ない人々、世帯収入が一年前よりも減少した人々、過去1か月間に仕事以外で電話などの音声によって頻繁に連絡をとった人々、新型コロナウイルスに感染したと診断された人々、昨年同時期よりも運動量が減った人々は、うつ病や自殺念慮を有する割合が高かった。相談相手のいる人々、過去1か月間に仕事以外で知り合いと直接会った人々、過去1か月間にLINEなどの音声を伴わないリアルタイムでの連絡を頻繁に行った人々、規則正しい生活を送る人々は、うつ病や自殺念慮を有する割合が低かった。

結論:横断研究である本研究は時系列や因果関係までは特定できないものの、いくつかの危険因子は示唆された。今後の追加調査を通じて更なる検証が望まれる。