2020年8月か9月に旅行に行った者は新型コロナウイルス感染と診断されやすかったか?

執筆者 越智 小枝 (東京慈恵会医科大学)/関沢 洋一 (上席研究員)/宗 未来 (東京歯科大学)
発行日/NO. 2020年12月  20-J-043
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概要

本研究はインターネット調査会社のモニターを対象として2020年10月27日~11月6日に行われたアンケート調査結果を用い、旅行の有無と新型コロナウイルス感染の診断との相関について検証した横断的調査である。本調査では2020年8月か9月に1泊以上の旅行(帰省を含み仕事上の理由による移動を含まない)をしたか否か、これまでに医療機関で新型コロナウイルス感染と診断されたことがあるか否か、およびその他の背景に関する質問を行い、新型コロナウイルス感染の診断をアウトカムとした多変量ロジスティック回帰分析を行った。年齢・性別・都道府県レベルの居住地の構成を概ね日本全体と合致するように調整した上で集計した16,642名の回答が分析に用いられた。分析の結果、8月か9月の1泊以上の旅行と新型コロナウイルス感染の診断との間には有意な相関が示された。さらに、過去1ヶ月における新型コロナウイルス感染に関係する7つの症状(発熱、咳、のどの痛み、だるさ、息苦しさ、味覚・嗅覚の障害、下痢)の経験についても旅行との関連につき多変量ロジスティック回帰分析で検証したところ、咳以外の症状につき、旅行との正の相関が示された。本研究には種々の限界があり、結果の解釈には十分な注意を要する。