日本卸電力取引所の前日価格の低下要因に関する分析:再生エネルギー普及とコロナ禍による需要減少を中心として

執筆者 池田 真介 (小樽商科大学)
発行日/NO. 2020年10月  20-J-040
研究プロジェクト 2020年後における電力市場設計の課題
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概要

日本卸電力取引所で公開されている前日スポット市場での取引価格、取引量、売り入札量、買い入札量の2015年3月30日から2020年7月9日までの日次データを分析した。まず、1日内の48半時間帯に関する中央値を日次観測値とする時系列データの分析から、(a)連系線使用権の間接オークション開始以降、売り入札量・買い入札量・取引量が強い周期的連動性を伴う上昇トレンドに従っていること、(b)取引量が買い入札量の非常に安定した割合(約83%)で推移していること、を発見した。また、(c)取引所の監査報告書から需要・供給の価格弾力性を推計し、それが価格・取引量比率の推移と類似していることを示した。さらに、平日・週末祝日別の日内48半時間帯に関する横断的データの分析から、(d)第1、2四半期における日内昼間の売り入札量が年々高くなっており、(e)平日よりも週末祝日の方がこの傾向が強くなることを確認した。以上の分析に基づく知見から、再エネ電力が直近のコロナ禍中における低い卸電力価格に及ぼした影響と、取引所で公表されていない市場需要曲線に与える含意を考察した。