中国鉄鋼業における過剰能力削減政策:調整プロセスとしての評価

執筆者 川端 望 (東北大学)/銀 迪 (東北大学)
発行日/NO. 2020年9月  20-J-038
研究プロジェクト 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第V期)
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概要

本稿の課題は、第十三次五カ年規劃の前半期である2016-2018年において実施された、中国鉄鋼業の過剰能力削減政策について、その執行過程と結果の事実解明を行うとともに、経済調整のプロセスという見地から評価することである。

第十三次五カ年規劃中の過剰能力削減政策は、従来の類似の政策と比較すると、能力の純減と設備更新を両立させる「能力置換」措置を組み込んだことや、国有ゾンビ企業の破綻処理に踏み込んだ点で、より周到なものであった。そして、2018年までに能力の純減とインフォーマル生産の淘汰に成功した。ただし、政府の監督を逃れたところで能力は成長し続け、削減効果を一部相殺した。この政策は、不効率な設備を淘汰し、優れた設備を残すという「優勝劣敗」を保証するプロセスを備えていなかった。1-1.5億トンという数量目標が絶対視される一方、淘汰設備の決定は行政裁量と交渉によって左右されるものとなっていた。「能力置換」政策にも抜け道があり、今後は置換後の能力純減を保証できない恐れがある。また、能力削減政策は、政策が作用する範囲においては、小型の民営企業を淘汰し、ゾンビ国有企業を財務的に再建する効果を持っていた。もっとも、その範囲自体が限られていたため、鉄鋼業全体としては民営企業が成長し続けた。

過剰能力削減政策は、数量目標を達成したものの、市場と政府のそれぞれの役割を適切に結びつけるには至っていない。本稿はこのように結論した上で、政策改善についてのインプリケーションを示した。