認知能力及び非認知能力が賃金に与える影響について

執筆者 安井 健悟 (青山学院大学)/佐野 晋平 (千葉大学)/久米 功一 (東洋大学)/鶴 光太郎 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2020年4月  20-J-024
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

本論文は、日本で初めて認知能力と非認知能力による賃金への影響を同時に分析するものである。経済産業研究所により実施された『全世代的な教育・訓練と認知・非認知能力に関するインターネット調査』の個票データを用いて、非認知能力としてのビッグファイブ、自尊感情、統制の所在と認知能力としての認知的熟慮性テスト(CRT)のスコア、読解力、数的思考力による影響をOLSと分位点回帰により推定した。得られた結果は以下の通りである。まず、非認知能力の中では、対象や推定方法に関わらず、外向性と自尊感情が有意に正の影響を持つ。勤勉性と情緒安定性は、男女別、賃金の分位別では正の影響を持つ場合がある一方、協調性と経験への開放性は男女別、分位別では負の影響を持つ場合があることが分かった。認知能力については特にCRTが強く正の影響を持ち、また数的思考力の方が読解力よりも大きな影響を持つことも確認された。