2005年都道府県間産業連関表の作成とその概要

執筆者 新井 園枝 (経済産業研究所 計量分析・データ専門職)
発行日/NO. 2020年2月  20-J-009
研究プロジェクト 地域別・産業別データベースの拡充と分析-地域別・産業別生産性分析と地域間分業
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概要

地域間の所得分配や生産性格差の決定要因として、生産要素の賦存や技術波及が重要となることは否定できないが、その結果として生み出される地域間の分業構造に注目することも重要である。例えば、国内の地域間分業構造は近年どのように変化し、それは地域間の生産性格差を縮める方向に作用したのか、それともその逆であったのか。こうした疑問に答えようとすると、地域間・産業間の取引構造も含んだ地域間産業連関表が必要となる。本研究では、こうした分析目的に役立てるために、都道府県を地域単位とした地域間産業連関表を作成した。

都道府県ごとに作成された産業連関表は既に存在するが、地域間・産業間の取引構造を含まない多地域表の段階では、地域間・産業間の取引構造の詳細な分析は行えない。今回作成する地域間産業連関表の特徴の一つは、地域区分が都道府県を単位としていることである。経済産業省がこれまで作成してきた9地域間産業連関表より詳細な地域区分にすることで、より地域の特徴に即した詳細な分析が可能になる。二つ目の特徴は、企業が都道府県を跨って事業所を展開し活動している「本社サービス」の投入について一部門を設けて産業連関表に明示的に導入したことである。

本論文では、こうした都道府県間産業連関表を2005年について作成する方法を説明し、その結果の概要について説明する。また、2005年表の作成過程で明らかになった残された課題についても指摘する。

こうした都道府県間産業連関表が利用可能になったことによって、国内の地域間・産業間の分析構造をバリュー・チェーン分析の枠組みを使って分析することが可能になった。また、「本社サービス」の産出・投入を反映させた県民経済計算の試算も可能になる。今後、期間を空けた複数の時点でこうした都道府県間産業連関表を作成することができれば、国内の地域間分業構造の変化についても分析できるようになることが期待される。