「自然災害に対する中小企業の備えと地域金融機関による支援についての調査」の結果と考察

執筆者 家森 信善 (ファカルティフェロー)/小川 光 (東京大学)/柳原 光芳 (名古屋大学)/播磨谷 浩三 (立命館大学)/津布久 将史 (大東文化大学)/尾﨑 泰文 (釧路公立大学)/相澤 朋子 (日本大学)/海野 晋悟 (香川大学)/浅井 義裕 (明治大学)/橋本 理博 (神戸大学)
発行日/NO. 2020年1月  20-J-002
研究プロジェクト 地域経済と地域連携の核としての地域金融機関の役割
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概要

頻発する自然災害に備えることは中小企業の経営の持続性を高めるために必要であり、2019年に成立した中小企業強靱化法では、中小企業のBCP策定を進めることが目指され、中小企業を支援する様々な組織・機関の連携の核として地域金融機関への期待が高まっている。一方、地域金融機関は事業性評価の取り組みを強化しており、BCP策定支援は事業性評価に基づく支援の一環だととらえることができる。しかし、地域金融機関によるBCP策定支援の取り組み状況について十分な調査は行われていない。そこで、我々の研究チームでは、2019年5月に地域金融機関の支店長7,000人に対してアンケート調査を実施し、2,623人からの回答を得ることができた。

本稿は、その調査結果を紹介することを目的としている。主な結果は次のとおりであった。①取引先企業のBCP策定状況をしっかり把握できている金融機関は少ない、②取引先企業にBCP策定を働きかけたことのある金融機関も少ない、③BCPに関連する信用保証制度や復興支援ファンドなどについても金融機関の認識は乏しい、④地元自治体のBCP支援策への理解も乏しい。他方、⑤事業性評価全般への取り組みは進展しており、職員の能力も向上している、⑥そのための人事評価の仕組みなどでも大きな改革が行われている、⑦信用保証協会、日本政策金融公庫や税理士等の外部機関との連携も一定の進展が見られる。

今後、これまでに進展してきた事業性評価に基づく取り組みの中に、BCP策定などの自然災害に対する経営強靱化という観点をいかに組み込んでいくかが課題である。