ICT投資が雇用と生産性に与える因果効果:税制ショックを用いた実証分析

執筆者 滝澤 美帆 (学習院大学)/宮川 大介 (一橋大学)
発行日/NO. 2019年12月  19-J-068
研究プロジェクト 生産性向上投資研究
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概要

本研究は、情報通信技術(ICT)投資が企業の雇用と生産性に与える短期的な影響を、因果関係の識別に配慮しながら実証的に検討したものである。具体的には、「2003年と2008年に日本で実施されたICT投資関連税制の変更がICT投資に与えた影響」を明示的に調査した結果を利用して、税制の変更に起因する外生的なICT投資の増加を計測し、このICT投資の増加が企業レベルの従業員数、IT人材の雇用数シェア、社内のIT人材と外部からの派遣IT人材の雇用数、労働生産性に与えた影響を推定した。最大で二千社程度に関する情報処理実態調査及び経済産業省企業活動基本調査の調査票情報を用いた推定結果は以下の通りである。第一に、当該税制変更ショックに起因する外生的なICT投資の増加は企業レベルの従業員数に影響しなかった。第二に、当該ICT投資の増加は社内IT人材の雇用を増加させた。第三に、当該ICT投資の増加が労働生産性に与える短期の影響は限定的であった。これらの結果は、税制ショックに起因する外生的なICT投資の増加によって、社内人材がICT資本と補完的なタスクへ短期間に再配分されたことを示唆している。