執筆者 | 井戸 清人 (国際経済研究所) |
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発行日/NO. | 2019年10月 19-J-056 |
研究プロジェクト | 産業再生と金融の役割に関する政策史研究 |
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概要
日本にとって1990年からの20年間は経済・金融システムの大きな転換点となった。この転換を引き起こしたのは3つの大きなショックであった。第1にプラザ合意による円高に対する対策がもたらしたバブルとその崩壊、第2に金融自由化とバブル崩壊後の金融危機、第3にアジア通貨危機である。
本稿では、特に日本を巡る国際金融環境の変化に注目し、その結果日本に求められた構造変化と国際的責務の高まりについて歴史的に回顧し論じる。第2節では、プラザ合意以降の為替政策の変遷と最近の論点について、第3節では、アジア通貨危機克服に向けた日本の役割と東アジア諸国の連携について、第4節では、東アジアにおける地域金融協調、さらにはG7からG20と拡大された国際金融協調体制について述べている。最後に今日の現状と課題についての考察も加えた。
21世紀の入口は国際金融環境にとっても大きな転換点であった。1999年にはユーロが導入され、また新興国経済の発展により世界経済のリーダーシップはG7からG20へと拡大した。そしてアジア通貨危機によりアジア諸国は生産分業体制と国際金融システムのパートナーとなり、日本経済も大きく変化することとなった。当初国際金融危機や為替政策のために始まったG20も、現在では世界経済の持続的成長や高齢化などの構造変化など幅広いテーマについて議論が行われており、日本が果たすべき役割は益々大きなものとなっている。