BCPの取り組みを促す上での金融機関の役割の現状と課題:RIETI「事業継続計画(BCP)に関する企業意識調査」をもとにして

執筆者 家森 信善 (ファカルティフェロー)/浜口 伸明 (ファカルティフェロー)/野田 健太郎 (立教大学)
発行日/NO. 2019年6月  19-J-037
研究プロジェクト 人口減少下における地域経済の安定的発展の研究
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概要

本稿は、「事業継続計画(BCP)に関する企業意識調査」(2018年10月実施)を利用して、支援を受ける企業の側の視点から、中小企業のBCP策定に対する金融機関による支援の現状と課題を捉えることを目的にしている。調査結果によると、規模の小さな企業、自己資本比率の低い企業、収益力が低い企業ほど、危機が発生した後の資金面での不安が強い。緊急時に備えた借入予約の必要性を感じている企業は多いが、実際に借入予約契約を締結しているのは1割にも満たない。一方、中小企業強靱化法(2019年5月成立)では金融機関による中小企業のBCP策定への支援が期待されているが、実際に、金融機関がBCP策定について積極的に要請したり支援したりすることは稀である。さらに、有事の対応について金融機関と話し合っている回答者はわずかで、金融機関と企業の間でリスクマネジメント分野でのコミュニケーションが十分にとれていない。BCPを策定しない理由として、「保証料や金利の引き下げなどのインセンティブ制度がない」という理由を挙げる比率は1割程度であり、金融面の誘因の弱さはBCPの非策定の主要な理由ではなかった。