執筆者 | 村田 啓子 (首都大学東京)/堀 雅博 (一橋大学) |
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発行日/NO. | 2019年5月 19-J-028 |
研究プロジェクト | 労働市場制度改革 |
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概要
経済成長の減速や少子高齢化など、我が国における雇用を取り巻く環境には大きな変化がみられる。年功賃金や長期雇用からなる「日本的雇用慣行」は日本の経済成長を促す重要な仕組みの一つとみなされてきたが、環境変化が進む中でその雇用慣行にも変化が生じている。本研究では、年功賃金と長期雇用の制度的補完性に着目し、賃金プロファイルのフラット化が雇用労働者の早期離職を加速させている可能性を実証的に分析した。「ねんきん定期便」から得られる個人の長期にわたる賃金履歴情報に基づいて構築したパネルデータ(「くらしと仕事に関するインターネット調査(LOSEF)」個票)を活用した分析を行った結果、賃金プロファイルのフラット化により雇用労働者の早期離職が促されていることを示唆する結果が得られた。また、その関係は日本的雇用慣行のコアの部分である大企業大卒雇用者に限定した場合でも同様に確認できる。こうした結果は、今後、賃金プロファイルの一層のフラット化が進むような場合、若年雇用労働者の早期離職率はさらに高まり、日本的雇用の下にある労働者のシェアの低下が続く可能性を示唆している。