設備投資に対する固定資産税の実証分析

執筆者 小林 庸平 (コンサルティングフェロー)/佐藤 主光 (ファカルティフェロー)/鈴木 将覚 (専修大学)
発行日/NO. 2018年11月  18-J-031
研究プロジェクト 固定資産税の経済・財政効果と改革の方向性
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概要

地方財政の標準的なテキストにおいて固定資産税は「望ましい地方税」の代表例として挙げられる。ただし、その前提は土地に対する課税であることだ。実際のところ、我が国の固定資産税は土地に加えて、家屋や機械設備等、償却資産を含む。特に償却資産に対する課税は、固定資産税に法人税とは異なる形での資本課税の性格を与えてきた。そこで本稿では資本税としての固定資産税の経済効果を検証する。具体的には工業統計調査及び経済センサス-活動調査(経済産業省・総務省)の事業所別パネルデータを用いて、固定資産税の償却資産課税が設備投資(有形固定資産の形成)に及ぼす影響について実証した。推定結果からは、固定資産税が設備投資を損なっている(マイナス効果が有意になっている)こと、特に流動性制約に直面している(キャッシュフローが負の)企業に対するマイナス効果が高いことが明らかになった。