標準必須特許を巡る法的問題―国際動向と日本の対応の考察

執筆者 鈴木 將文 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2018年5月  18-J-020
研究プロジェクト 標準化と知財化―戦略と政策
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概要

本稿は、標準必須特許(いわゆるFRAND宣言のなされたもの)を巡る法的問題について、世界主要国(我が国のほか、欧州、米国及び中国)における法的紛争や政策的対応を紹介するとともに、それらの分析を踏まえ我が国としての対応について考察するものである。主要国の動向としては、特に、近年のドイツ、米国及び中国における裁判例、並びにわが国、米国、EU等の競争政策その他の政策的措置を採り上げる。それらを踏まえ、標準必須特許の権利行使を制約する法的原理の比較や個別論点((i) 特許権者と標準実施者の間の交渉のあり方、(ii) FRAND条件を充たす実施料の計算方法、(iii) 紛争解決手続のあり方、(iv) 標準必須特許権の移転の扱い)について検討する。特に標準必須特許の権利行使を制約する法的原理について重点的に分析を行い、国際的には、契約法アプローチと競争法アプローチの2つの考え方が見られることを指摘したうえで、両アプローチの差異につき分析する。そして、我が国としては、基本的に契約法アプローチの採用が適切であるとする。