京都議定書と地球温暖化対策という政策の歴史的意義

執筆者 牧原 出 (東京大学先端科学技術研究センター / ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2017年12月  17-J-074
研究プロジェクト 京都議定書を巡る政治過程の把握と分析に関する研究
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概要

本プロジェクトは、地球温暖化という争点の起点となる1997年の京都議定書採択をめぐる国内の動きについて、通産省と経済界とに焦点を当てて、そこでの政策の構造と組織の戦略とについて再検討する。関係者への聞き取りを重ねた結果浮かび上がったのは、通常EUの政策構造について言われる「マルチ・レヴェル・ガヴァナンス」が典型的にあてはまるという特徴である。そこでは国連、日本政府、経団連、業界団体、企業の複層的な構造の中で、強制力なき協調行動によって、合意が形成され、温暖化ガスの排出削減が実行された。グローバル化の中で、通商政策と産業政策とがこのガヴァナンス構造を通じて結合していくのは、21世紀的な経産省の行政の特質となっていく。その当初の組織戦略としては、マスメディアへの操作的な情報発信、結節点の多重的な確保、省庁編成における集権化といった諸策が有効であった。最後に、今後の経済産業政策において、これらをより活用することが必要となるであろうという展望を論じる。