リーマンショック後の中小企業における設備投資とその変化:保証制度及びマクロ経済環境との関係

執筆者 小塚 匡文 (流通科学大学)
発行日/NO. 2017年8月  17-J-054
研究プロジェクト 地方創生に向けて地域金融に期待される役割-地域経済での雇用の質向上に貢献するための金融を目指して-
ダウンロード/関連リンク

概要

本稿ではTobinのq型投資関数に内部留保、負債比率など資金調達に影響を与える変数を説明変数として追加したモデルを用いて、中小企業の設備投資関数を推定した。使用データは、「中小企業実態基本調査(平成19年~平成26年実施、ただし平成18年度~平成25年度実績値)」のクロスセクション・データである。実証分析の結果、緊急保証制度、およびその後のセーフティネット保証(5号)施行時期も含めて、負債比率の高い企業は負債による設備投資が相対的に困難であったことが示されている。また平成24年度(2012年度)の建設業では、アベノミクス下での公共事業増加を見込んだためと思われる設備投資の底上げが見られるものの、負債比率が高い同業種は資金制約の面でより苦しい状況にあることが示唆されている。そして三大都市圏については、リーマンショック後に設備投資のための借入制約が強くなっていること、すなわちデッド・オーバーハング仮説が成立する傾向が示唆されており、三大都市圏とそれ以外の差が存在していることがわかる。三大都市圏とそれ以外の地域の間にギャップのある状況の対策として、地域ごとに異なる保証制度を導入することが重要と考えられる。2017年5月に中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案が成立した。その中で地域の金融機関と保証協会が連携することが記載されたが、このことが地域差の解消につながるものと期待される。