生産予測の不確実性:製造企業のミクロデータによる分析

執筆者 森川 正之 (理事・副所長)
発行日/NO. 2017年3月  17-J-020
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概要

本稿は、製造企業による生産量の事前の予測値と事後的な実績値に関する月次のミクロデータを使用し、生産予測の不確実性に関する観察事実を提示するものである。高頻度かつ定量的な生産予測の情報を用いた企業レベルの不確実性の分析は、おそらく世界で初めてのものである。分析結果によれば、産業集計レベルで生産量が下振れした時にも上振れした企業が多数存在するなど、生産予測誤差は企業による異質性が顕著である。企業特性別には、ICT関連の業種、設備投資との関連が強い資本財、生産規模の小さい企業の先行き不確実性が高い。生産の不確実性は不況局面で高い傾向があり、不確実性はマクロ経済の変動に先行する傾向がある。この先行関係は集計データからは確認されず、企業レベルのデータの有用性を示している。日本の製造企業の生産の不確実性は、日本政府の経済政策だけでなく、グローバルな政策の不確実性の影響も受けるようになっている。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:17-E-081