北陸製造企業の国際化と生産性

執筆者 浜口 伸明 (ファカルティフェロー)/後閑 利隆 (日本貿易振興機構アジア経済研究所)/早川 和伸 (日本貿易振興機構アジア経済研究所)/亀山 嘉大 (佐賀大学)/丸屋 豊二郎 (福井県立大学)/松浦 寿幸 (慶應義塾大学 / KU Leuven)/白又 秀治 (北陸AJEC)/張 栩 (福井県立大学)
発行日/NO. 2017年1月  17-J-002
研究プロジェクト 国際化・情報化新時代と地域経済
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概要

国際化した企業の3大都市圏への集中度は人口集中度を大きく上回っている。北陸企業の国際化は地方圏の中では相対的に高い水準にあるが、北陸の国際化企業は3大都市圏の国際化企業よりもはるかに小規模で生産性は低い。北陸企業は国際化していない企業の生産性も高く、国際化企業と、顕著な差がない。北陸企業は同業種の企業が集積することによる産業集積の外部性から生産性にプラスの効果を受けている。企業のイノベーションを支える公設試験機関や大学TLOといった地域組織が一定の役割を果たしている。しかし北陸の産業集積の成長が更なる外部性の拡大を呼ぶような自律的な成長経路にはない。北陸の事業環境は国際化へのハードルが高く、事業環境が良ければ国際化しているはずの水準の生産性を持つ企業が国際化しておらず、統計的に国際化企業と非国際化企業の生産性の差が判別しにくくなっている。自社で国際化していない場合でも、国際化している企業に製品を販売することで間接的に国際化しており、間接的に国際化している企業の生産性は、直接的にも間接的にも国際化していない企業よりも高い。域内に主要な国際港がなく、関東、中部、関西の3大都市圏に直接アクセスできる高速道路や鉄道のリンクを持つ北陸では、生産性の高い企業が自ら輸出するよりも輸出企業へのサプライヤーとなる地の利が大きいためではないか。