通産省(経産省)の産業調整政策

執筆者 渡辺 純子 (京都大学)
発行日/NO. 2016年3月  16-J-033
研究プロジェクト 経済産業政策の歴史的考察―国際的な視点から―
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概要

本稿は、戦後、通産省(経産省)が実施してきた産業調整政策について回顧し、それが1990年代から2000年代に至る世紀転換期に終焉を迎えたことの意義や影響について考察している。

1950〜60年代には繊維産業と石炭産業、70年代以降は基礎素材産業を主な対象とし、一般法としては78年の特安法、83年の産構法、87年の円滑化などを根拠法として実施された産業調整政策は、(1)構造不況業種の生産・投資調整(それを基盤として産業調整を推進する)、(2)産業調整の過程で生じる社会的摩擦の緩和(それにより産業調整を円滑化させる)という2つの要素から構成されていた。通産省は、時代ごとの要請に応じて、これらに係る調整役としての機能を果たしていた。

しかし、1990年代以降、伝統的な産業調整政策は終焉し、産業・企業のリストラや再生に係る部分は産業再生政策に転換した。それは市場の活用を原則としているが、産業・企業に対する政府介入は形を変えて存続している。他方で、労働面の一部は過度に市場化された。ここから生じる問題は、中長期的に見れば、日本経済にとってマイナスの作用を及ぼす恐れがあり、制度設計の再検討も必要であると思われる。