世紀転換期における通商産業・経済産業政策の転換

執筆者 武田 晴人 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2016年3月  16-J-026
研究プロジェクト 経済産業政策の歴史的考察―国際的な視点から―
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概要

本稿は、2001年の経済産業省発足の前後の時期に焦点を定めながら、この時期に生じた通商産業政策・経済産業政策の基調変化を1970年代半ばからの政策展開という歴史的な視点から振り返り、その歴史的な位置を明らかにしようとするものである。この時期に国際経済社会の変容に対応しながら、通商産業(経済産業)政策は、マクロ経済政策思想の形成役を担うと同時に、マクロとミクロとの接点に絶えず留意し、両者間を政策的に調整し、さらに国内経済と海外経済関係とのバランスをはかる重要な役割を担うことが求められ、その期待に応えることを主たる任務としてきた。それは通産省が規制緩和などの推進を通して実現してきた政策の延長線上に位置づけられるものであり、その中で通産省は、通商問題、環境問題やエネルギー問題、地域間格差問題などの構造的な課題に政策的に切り込んでいく際の政策手段の選択と、関与の範囲についての抑制的な態度――民間企業の創意に委ね市場の調整に期待するような――を醸成してきた。このような動きを受けながら、1990年代に生じた長期の不況に対して経済活力を回復する経済構造改革が主要な政策課題に登場するとともに、通産省はこの問題に積極的に取り組み、経済活力を回復し経済を成長軌道に乗せることに努めることを自らの任務とするようになった。このような対応は、時代が要請する政策課題の変化に柔軟に対応して打開策を見出すことに努めてきたそれまでの通商産業政策のあり方を継承するとともに、政策課題の設定の仕方に大きな転換を迫るものであったが、その転換には政策手段や政府の関与についてそれまで以上に抑制的な行政改革の考え方が強く反映されたものであった。