執筆者 | 濱中 淳子 (大学入試センター) |
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発行日/NO. | 2016年3月 16-J-022 |
研究プロジェクト | 労働市場制度改革 |
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概要
日本の労働市場において、大学教育は役に立たないものとして認識されてきた。「大学で扱っている知」と「仕事で用いる知」の乖離を指摘する声は後を絶たず、大学改革の必要性も繰り返し訴えられている。しかし、この「大学教育無効説」とでも呼べる言説については、その妥当性について疑問を投げかけることもできるはずだ。すなわち、大学教育は実態として役立っているにもかかわらず、役立っていないと語られているにすぎない可能性もある。こうした観点から、本稿は、企業関係者側のまなざしに注目し、とりわけ文系領域の教育をめぐる現時点での評価のありようとその背景について検討を加えた。
事務系総合職採用面接の担当者に実施した質問紙調査のデータを分析した結果、主な知見として次のものが得られた。(1)専門の学習・研究が役立つかについての意見はばらついており、意義を評価している者も少なくないというのが現状である、(2)ただし、学習・研究への評価が低いのは、大企業といった発言力がある組織の関係者に多い、(3)新事業への参加や業績不振などの苦境を経験することは、大学時代の意義を認識することにつながるが、必ずしも学習・研究の評価を大きく高めるものになっているわけではない、(4)面接担当者自身の経験が及ぼす影響も看過できるものではなく、自らが大学時代に意欲的に学習に取り組んでいなければ、学習を役立つものとして認識することは難しくなる。
さらに分析からは、大学時代の学習・研究に意義を見出している場合でも、専門に対する理解不足の問題から、面接場面で学習のことを十分に取り上げられないケースがあることがうかがえ、このように大学教育無効説には企業側の事情も大きく絡んでいることが示唆された。