消費内生化産業連関モデルによる六次産業化事業の地域経済効果―沖縄県を事例に―

執筆者 阿久根 優子  (麗澤大学) /石川 良文  (南山大学) /中村 良平  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2015年8月  15-J-052
研究プロジェクト 経済グローバル化における持続可能な地域経済の展開
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概要

農商工連携による六次産業化は、地方において低迷を続ける一次産業の振興と地域活性化効果を併せ持つ産業振興の切り札の1つであり、地域内の密な一次産業と二次産業、三次産業の連関構造によって地域の付加価値向上を狙う目的がある。このような政策の有効性を示すためには、経済効果として産業連関を含めつつ域内の所得増加効果を明らかにする必要がある。本稿ではその分析枠組みとして、所得から消費に転じそれが再び最終需要となって生産を誘発するという循環を考慮した消費内生化産業連関モデルと六次産業化事業を分析するためのいくつかの改良点を提示する。そのうえで、沖縄県の畜産、野菜、果樹関連の六次産業化事業を事例に地域経済効果を試算した。その結果、対象とした事業すべてで、六次産業化事業と競合する既存事業には負の影響があるものの、地域全体としての経済効果はそれを上回り、農商工間で連携した高付加価値化事業への移行は地域経済に正の影響をもたらすことが確認された。また、野菜や果樹の六次産業化事業が投入関係のない飲食業に正の波及効果をもたらすことがわかった。これは、所得の上昇が消費増加につながる消費内生化モデルの有用性を示した結果である。