個人の貿易政策の選好と地域間の異質性:1万人アンケート調査による実証分析

執筆者 伊藤 萬里  (ハーバード大学 / 専修大学) /椋 寛  (学習院大学) /冨浦 英一  (ファカルティフェロー) /若杉 隆平  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2014年11月  14-J-052
研究プロジェクト 我が国における貿易政策への支持に関する実証的分析
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概要

自由貿易協定の交渉が加速する中、国内において貿易自由化への賛否が割れる状況が顕在化している。本稿では、日本全国の1万人から回収した貿易政策の選好に関するアンケート調査の結果から、どのような属性が保護貿易政策への支持と関連があるのか実証分析を実施した。分析では、我が国では特に地域間で貿易政策の選好に差が顕著であることから、個人が居住する地域の特性が貿易政策の選好にどのような影響を与えているかという点に焦点を当てた。その結果、収入や教育水準、所属産業・職種といった個人の労働市場特性や、性別や子供の有無などの社会的な個人特性と共に、居住する地域の特性が貿易政策の選好と強い相関関係を有していることが明らかとなった。具体的には、農業就業者比率が高い地域に住んでいる人は、たとえ自分が農業従事者でなくとも保護貿易政策を選好する確率が高いことが示された。他方で、この影響は転居の意向がある個人に関しては観察されず、地域間で移動が困難であることが貿易政策の選好に影響を及ぼすことが明らかとなった。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:15-E-003