為替レートが日本の輸出に与える影響の数量的評価:構造VARによる検証

執筆者 祝迫 得夫  (ファカルティフェロー) /中田 勇人  (明星大学)
発行日/NO. 2014年11月  14-J-051
研究プロジェクト 輸出と日本経済:2000年代の経験をどう理解するか?
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概要

日本のマクロ政策論議では、為替レートの変動が輸出ならびに国内の景気に与える影響に大きな関心が寄せられてきた。しかしリーマン・ショック後の2008 年末から2009 年にかけての局面では、円高の急速な進行という「価格ショック」と同時に、世界的な景気の減速に伴う総需要の急激な落ち込みという「数量ショック」が発生しており、円高による輸出減少という伝播経路に景気後退のすべての要因を求めるのが難しい。本論文では構造VARの枠組みで、海外需要ショックと為替レート変動という2つの外生的ショックが存在するような状況を想定し、それぞれのショックが日本の輸出に与える影響の相対的な重要性について数量的な評価を行う。さらに、原油価格の変動が円レートに与える影響を考慮するように拡張したVARシステムによって、よりモデルを精緻化した分析も行う。論文の後半では、1980年代半ばのプラザ合意後の円高不況、1990年代中盤の急激な円高の進行、リーマン・ショック後のいわゆる“trade collapse”の時期という歴史的な円高局面を取り上げ、それぞれのイベントにおいて、海外需要ショックと為替レート変動が果たした役割について比較・検証する。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:15-E-029