原油価格,為替レートショックと日本経済

執筆者 祝迫 得夫  (ファカルティフェロー) /中田 勇人  (明星大学)
発行日/NO. 2014年11月  14-J-050
研究プロジェクト 輸出と日本経済:2000年代の経験をどう理解するか?
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概要

本論文では構造VARの分析枠組みを用いて、外生的なショックとして (i) 原油のサプライショック、(ii) 需給に関係のない原油価格の変動、(iii) 世界景気(需要ショック)、(iv) 他の要因では説明されない為替レートに固有なショックという4つの要因を想定し、これらのショックが日本経済全体および産業別・規模別の産出量に与える影響について検討を行う。分析の結果、原油生産の外生的変動は産出量にほとんど明確な影響を与えないこと、逆に世界的な好景気は明らかなプラスの影響を与えることが確認された。また為替レートの影響は産業・企業規模によって異なり、円高は日本経済全体にはマイナスの影響を与えるものの、非製造業の中小企業に限っていえば明確なプラスの効果を持つ。政策的インプリケーションという意味において本論文の分析結果で重要なのは、為替レートそのものの変動と、構造VARの推計結果から計算された為替ショックの違いである。特に2008年秋のリーマン・ショック以降の円高に関しては、世界的な実物経済活動の低下と他の要因では説明のつかない原油価格の低下が大きな役割を果たしており、それを無視して円高の日本経済への影響を強調する政策論議はミスリーディングであろう。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:15-E-028