本社機能と生産性:企業内サービス部門は非生産的か?

執筆者 森川 正之  (理事・副所長)
発行日/NO. 2014年5月  14-J-028
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概要

本稿は、日本企業の大規模なパネルデータ(2001~2011年)を使用し、本社機能の大きさを規定する要因および本社機能と生産性の関係を実証的に分析するものである。本社機能は企業内事業サービス部門の中核であり、現代の企業において戦略的意思決定を支える重要な役割を果たしている。しかし、間接部門の縮小が組織全体の効率化につながるという単純な議論が行われることも少なくない。本社機能の大きさは、意思決定の集権化/分権化と密接に関係しているが、理論的に集権化と分権化のいずれが望ましいかはさまざまな条件に依存する。分析結果によれば、第1に、分析対象期間において本社機能部門の平均規模は安定的だが、同じ産業内でも個々の企業による分散は非常に大きい。第2に、企業規模全体の大きさ、事業多角化、事業所数の多さは本社機能部門の規模を小さくする関係が観察され、企業規模の成長や事業の複雑化が分権化をもたらすことを示唆している。第3に、量的なマグニチュードは小さいが、企業内情報ネットワークの充実は本社機能規模を小さくする傾向がある。第4に、本社機能部門は企業全体の生産性に対して正の貢献をしている。最後に、企業内情報ネットワークと本社機能は生産性に対して補完的な効果を持っている。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:14-E-036