執筆者 |
関沢 洋一 (上席研究員) /吉武 尚美 (お茶の水女子大学) |
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発行日/NO. | 2013年11月 13-J-073 |
研究プロジェクト | 人的資本という観点から見たメンタルヘルスについての研究 |
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概要
ペンシルバニア大学のセリグマン教授らが提唱したポジティブ心理学において、人々がどうしたらもっと幸せになれるかの研究が行われている。セリグマンらの研究では、毎晩寝る前に良いことを3つ書くことを1週間継続するだけで、その後半年間にわたって、幸福度が向上し、抑うつ度が低下する(うつの症状が減る)という結果が出た。これが本当であれば、我が国においても、学校や職場などでこのエクササイズを教えれば、幸福度向上およびそれに起因するメリットを多数の人々が享受できることになる。そこで、3つの良いことを書くエクササイズの効果を検証することとした。調査会社のモニターから選ばれた1000名の研究協力者をランダムに2つの群に分け、TGT(Three Good Things)群では、週に2回以上、3つ良いことを書いてもらい、統制群には、過去の思い出を3つ書いてもらった。このエクササイズを4週間続けてもらった。
エクササイズの結果、TGT群の肯定的感情の得点がエクササイズ期間の終了直後に上昇したものの、その1カ月後には低下し、効果は持続しなかった。他の指標(抑うつ度(うつっぽさ)、生活満足度、楽観度、否定的感情)は、エクササイズ前後に得点の有意な変化はなかった。但し、人を信じる程度を点数化した一般的信頼尺度の得点だけは、TGT群・統制群の双方でエクササイズ後に上昇し、更に1カ月後も両群において上昇した。
※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:15-E-001