不当廉売規制の残された課題

執筆者 川濵 昇  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2013年8月  13-J-057
研究プロジェクト グローバル化・イノベーションと競争政策
ダウンロード/関連リンク

概要

低価格販売の行き過ぎを規制する不当廉売規制は競争政策上重要な課題であったが、価格競争を萎縮させるという懸念もあって過剰規制を避けるよう要請されていた。特にシカゴ学派の影響が顕著になった1970年代後半から、平均可変費用未満の価格を主たる規制対象とする費用ベースの規制基準にさらに規制のスクリーニングのための要件を課すなど過剰規制を避けることに焦点が合わされてきた。しかし、規制緩和・民営化が進められた分野やデジタル化が進んだ産業分野で不当廉売が疑われる事案が多発し、またそれらの分野で平均可変費用基準が過小規制となることが懸念されだし、本当に過小規制になるのか逆に費用ベースの基準がそもそも妥当なのかをめぐって議論が展開してきた。わが国の不当廉売規制は近時ガイドラインや判例を通じてかなり明確なものとなってきたが、上記の問題となる状況についての規制基準は不明瞭であり、検討もほとんどない。本論稿では費用ベースの基準の根拠の探求を通じて、上記過小規制問題の対象となる領域での規制のあり方を検討するものである。