我が国製造業の国際展開と企業間取引構造

執筆者 伊藤 公二  (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2013年5月  13-J-035
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概要

経済のグローバル化が進展した結果、1つの製品・サービスの提供に国境を越えてさまざまな企業が関与するようになった。輸出や海外直接投資が難しい企業でも、こうしたグローバル・バリュー・チェーン(GVC)への参加が企業の成長性を高めるという指摘は以前からなされているものの、企業間取引の把握が統計上の制約から容易ではなく、GVCへの企業の参加状況自体確認が困難であった。

そこで、本稿では、東京商工リサーチ「TSR企業相関ファイル」および「TSR企業グループ情報ファイル」、経済産業省「企業活動基本調査」の個票データを2006年時点で接合し、国際化企業(輸出または海外子会社を保有する企業)、国際化企業に直接商品を納入する企業(GVC参加企業)、その他の企業(GVC不参加企業)に分類し、各グループの属性を比較した。その結果、GVCの最上位に位置する国際化企業が最も規模が大きく、売上高の面でも最も良好であり、GVC参加企業、GVC不参加企業の順に続いた。この結果は、GVCへの参加により、また、GVCのより上位に位置することにより企業の成長性が高まる可能性を示唆している。