アメリカにおける新たな労働者参加の試みとその法理論的基礎づけ

執筆者 竹内(奥野) 寿  (立教大学)
発行日/NO. 2013年5月  13-J-026
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

日本の労働法は、これまで、最低労働条件を法定し義務づけた上で、これを上回る労働条件実現を労使の自主的交渉へ委ねる形で構築されてきた。しかし、労働組合組織率低下の中、一方でこのようなモデルは困難に直面し、また、他方で労使当事者の決定に規律を委ねる法規定の拡大もみられるものの、これを支えるべき労働者代表制度の整備等は十分行われていない。本稿は、同様に労働組合組織率が低下し、立法改革の試みも頓挫してはいるが、新たな労働者参加の試みが行われ、また、その法理論的基礎づけも行われているアメリカ労働法の動向について、特に、この領域における近時の最も重要な研究であるCynthia Estlund, Regoverning the Workplace: from Self-Regulation to Co-Regulation (Yale University Press, 2010)を詳細にフォローしつつ論じ、日本における労働法のより適切な実現の観点から、労働者代表のあり方にかかる法政策的示唆を得ようとするものである。本稿では、まず、アメリカにおける新たな労働者参加の試みとして、企業による自主的規制における労働者参加の取組み、および、規制当局ないし労働者側による労働法規制実現のための働きかけの取組みについて紹介する。次いで、このような自主的規制が適切に機能するための法理論として、監視役としての労働者の位置づけ、および、このような制度設計実現のための労働法の役割について述べる。最後に、アメリカ労働法におけるこのような動向を踏まえ、日本における労働法のより適切な実現に向けた労働者代表制度についての法政策的示唆を論じる。