執筆者 |
若杉 隆平 (ファカルティフェロー) /田中 鮎夢 (研究員) |
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発行日/NO. | 2013年2月 13-J-002 |
研究プロジェクト | 日本経済の創生と貿易・直接投資の研究 |
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概要
この論文は、東日本大震災の被災製造業に関してRIETIが独自に行った調査結果を用いて、震災からの事業の復旧に制約となった要因を検証する。推計結果は、被災の大きさ、電力・工業用水・輸送手段の寸断が復旧を長期化する外生的要因となったことに加えて、サプライ・チェーンの寸断が復旧に要する期間を長期化させる要因となったことを示す。さらに復旧期間の長短を加味した分位点回帰の推計結果から、比較的短期間で復旧した事業所にとっては電力供給の寸断が大きな障害となった一方、復旧に要する期間の長期化した事業所ほどサプライ・チェーンの寸断がもたらす影響が大きかったことが明らかとなった。これは新たな発見である。限られたデータによる分析から一般的な政策的含意を得ることには慎重でなければならないが、サプライ・チェーンの寸断が復旧期間を長期化させたという事実は、自然災害から産業が受ける被害を最小化する上で『サプライ・チェーンの複線化』が重要であることを示唆する。