執筆者 |
児玉 直美 (コンサルティングフェロー) /乾 友彦 (日本大学) /権 赫旭 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2012年9月 12-J-031 |
研究プロジェクト | サービス産業生産性向上に関する研究 |
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概要
賃金構造基本統計調査を使用して、1990年代および2000年代における日本の常用雇用労働者の賃金変化の要因分析を行った。その結果、既存の研究結果と異なり、国際的な価格競争に巻き込まれている製造業よりむしろ、サービス産業の賃金が下がっていたことが判明した。
製造業の賃金は、1993-1998年の期間には上昇、1998-2003年の期間、2003-2008年の期間については大きな変化が観察されなかった。一方、サービス産業は、1993年以降一貫して賃金は下がり、1993-1998年は-3.0%低下、1998-2003年は-7.8%低下、2005-2009年は-7.9%の低下とその下落率も拡大した。1993-1998年の期間における賃金下落の最大の要因はサービス産業におけるパート労働者の増加である。1998-2003年の期間は、ほぼ全ての業種で、全ての属性の労働者の賃金水準が下落した。2003-2008年の期間は、製造業の賃金は下がらない中で、サービス産業では大きく下落している。この時期のサービス産業の賃金下落には、労働時間の減少が最も大きく影響し、次いで、パート労働者の増加が影響した。
さらに、1990年代から2000年代にかけて、女性労働者と男性労働者、パート労働者と一般労働者の賃金格差は縮小したことも明らかになった。年齢と賃金の関係を示す賃金カーブの傾きは、製造業についてはほとんど変わっていないものの、サービス産業の20歳代、30歳代では以前に比べると緩やかになっている。