執筆者 |
須網 隆夫 (早稲田大学) |
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発行日/NO. | 2011年9月 11-J-068 |
研究プロジェクト | 通商関係条約と税制 |
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概要
多国間・二国間の通商関係条約による法的枠組みによる国際的な経済関係の深化を背景にして、各国における税制のあり方が、国境を越えて行われる国際投資に影響することが意識されるようになってきている。環境規制・労働規制を含む社会規制など、行政規制の在り方は、国際投資の流れに影響を及ぼすが、直接税制のあり方も、国際投資に影響を及ぼす。投資自由化協定の文脈において、各国の直接税制に起因して、どのような問題が生起するかについては、域内における経済統合を深化させ、市場統合を実現した欧州連合(EU)の経験が参考になる。EUでは、投資自由化と直接税制との緊張関係から、さまざまな問題が既に発生し、EU司法裁判所の判例法が、両者の関係につき、一定の判断を蓄積しているからである。本稿は、特に、EU法が保障する「開業の自由」と加盟国の直接税制の関係を、最近のEU司法裁判所の判例、特にCadbury事件先決裁定を素材に検討して、日本にとっての示唆を得ようとする。