執筆者 |
森川 正之 (副所長) |
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発行日/NO. | 2011年4月 11-J-046 |
研究プロジェクト | 少子高齢化時代の労働政策へ向けて:日本の労働市場に関する基礎研究 |
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概要
人口が集積した大都市は知識のスピルオーバー、労働市場での良好なマッチング等を通じて労働者の生産性を高める効果を持つと考えられている。本稿は、集積の経済性および労働者の人的資本と賃金の関係を、「賃金構造基本調査」のマイクロデータ(1990~2009年)を用いて定量的に分析するものである。分析結果によれば、卸売業、小売業など一部のサービス産業で高い集積賃金プレミアムが観察される。また、学歴、勤続、経験といった人的資本の指標が高い労働者ほど集積の経済効果が強く働いており、人口集積地においてスキル労働者ほど学習が速いこと、企業と労働者のマッチングの質が高いことを示唆している。人口減少、知識経済化、サービス経済化といった構造変化が進展する中、労働者の地理的な移動を円滑化し、人口稠密な都市を維持・形成していくことが、労働者の賃金の上昇とともに日本経済全体の生産性向上に対して望ましい効果を持つと考えられる。
※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:11-E-060