英国におけるWLB~国・企業の取組の現状と課題、日本への示唆~

執筆者 矢島 洋子  (三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)
発行日/NO. 2011年3月  11-J-039
研究プロジェクト ワーク・ライフ・バランス施策の国際比較と日本企業における課題の検討
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概要

本稿では、英国におけるワーク・ライフ・バランス(以下、「WLB」という。)政策の現状と課題、企業の取組と労働者からみた職場環境を把握し、我が国の取組状況との比較分析を行っている。なお、本稿の分析は、英国における現地ヒアリング調査と文献調査、日本と英国における労働者アンケート調査の結果に基づいて取りまとめたものである。

英国は、働き方の柔軟化を促すWLB取組をスタートさせた背景として、長時間労働の問題や、男女の固定的役割分担意識に基づく就労格差を抱えている点において、我が国に類似している。また、取組の手法として、一部、労働者の「柔軟な働き方(Flexible Working)」を選択する権利を強める法律を導入しているものの、基本的には、企業に対してWLB取組のメリットを示し、自主的な取組を促すことに重点を置いている点も共通している。2007年から取組をスタートさせた我が国に対して、英国は2000年からのスタートであり、WLB取組に対して、国、企業、労働者団体等の立場から、一定の成果と課題が指摘されている。こうした関係機関の認識と統計データにみる社会環境の変化を踏まえ、英国における取組の現状、成果、課題を整理し、我が国の取組への示唆を提示している。さらに、労働者アンケートの分析から、子どものいる男女の働き方の選択における日英の共通性と違いを示す。特に、「柔軟な働き方」の選択肢の中でも、男女の家庭内の固定的な役割分担を背景として、女性の利用割合の高い「短時間勤務」という働き方に対する日英の捉え方の違いや、女性のキャリアに与える影響の違い等に着目した分析を行っている。