日本企業の人的資源管理と生産性-インタビュー及びアンケート調査を元にした実証分析-

執筆者 宮川 努  (ファカルティフェロー) /西岡 由美  (立正大学) /川上 淳之  (リサーチアシスタント / 学習院大学) /枝村 一磨  (東北大学)
発行日/NO. 2011年3月  11-J-035
研究プロジェクト 日本における無形資産の研究
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概要

本論文では、Miyagawa, et,al (2010)で利用した日本企業の組織管理、人的資源管理に関するインタビュー調査に加え、人事部へのアンケートを使い、人材育成を含む人的資源管理と企業パフォーマンスとの関係を調べた。インタビュー調査から得られる人的資源管理のスコアと人事アンケートからの情報を合わせてみると、中高年社員(45歳以上)の比率が高い企業では、人的資源管理の柔軟性に欠けるという現象が見られる。人的資源管理のスコアと従業員1人当たりの教育訓練費には相関性が見られなかったが、1人当たりOff--JT受講日数については相関性が見られた。人事部へのアンケート調査から得られた労働時間の情報を加えて、生産関数アプローチにより人的資源管理のスコアと企業の付加価値との関係を見ると、Miyagawa, et,al (2010)は確認できなかった両者の正の関係を確認することができた。また個別のインタビュー項目のスコアをダミー変数として生産関数に入れて推計すると、研修による人材育成と付加価値とは強い正の関係が見られた。本論文では一時点のデータを利用しているため、因果性について言及することはできないが、日本では経済全体や企業の成長のために高度な専門的職業知識を提供する機関を育成していくことの意義はあると考えられる。