-企業情報開示システムの最適設計-第5編 四半期情報開示制度の評価と改善方向

執筆者 加賀谷 哲之  (一橋大学) /中野 貴之  (法政大学) /松本 祥尚  (関西大学) /町田 祥弘  (青山学院大学)
発行日/NO. 2011年3月  11-J-017
研究プロジェクト 企業情報開示システムの最適設計
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概要

本研究の狙いは、わが国における四半期情報開示制度の実態と同制度の効果とコストを明らかにしたうえで、その改善方向についての議論の示唆となる証拠を提示することにある。本稿では、四半期情報に対する株式市場の評価、企業経営者に対する説明責任の徹底や規律付け効果、四半期報告制度に対する当事者の意識や行動という3つの側面から、四半期情報開示制度の実態や同制度の効果とコストを検証した。

検証の結果、四半期情報開示制度は、投資家にとっての有用性という観点からも、経営者に対する規律付け効果という観点からも一定の役割を果たしていることが確認された。その一方で、現在、日本で適用されている、法定開示に基づく四半期報告制度は、日本企業にとって決算作業等の面において負担感が大きい制度となっている点も確認された。とりわけIFRSを基軸とした会計基準の国際的統合化・収斂化が進展し、会計処理における見積もりや予測の要素が拡大すると、そうしたコスト負担感が拡大する可能性もある。四半期情報開示制度がもたらすベネフィットをさらに多角的に検討し、そのベネフィットを四半期情報開示制度に関わる当事者が共有する必要がある。さらに四半期情報開示制度がもたらす企業経営や経済への影響を総合的に分析し、法定開示、証券取引所等の自主規制、および企業によるIR等をも含めた枠組みの中で、四半期情報開示がどのような役割を果たしていくかを整理していくことが求められる。