株式所有構造の多様化とその帰結:株式持ち合いの解消・「復活」と海外投資家の役割

執筆者 宮島 英昭  (ファカルティフェロー) /新田 敬祐  (ニッセイ基礎研究所)
発行日/NO. 2011年2月  11-J-011
研究プロジェクト 企業統治分析のフロンティア:日本企業システムの進化と世界経済危機のインパクト
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概要

日本企業の株式所有構造は、1997年の銀行危機以降、かつてのインサイダー優位のそれからアウトサイダー優位の構造に大きく転換した。本稿では、この所有構造の劇的な変化の決定要因とその帰結を、株式持ち合いと海外投資家に焦点を合わせて分析する。まず、2000年代後半にみられた持ち合い「復活」は、銀行・事業会社間の持ち合いという過去への回帰ではなく、事業会社同士の関係強化という新たな動きであり、主としてエントレンチメント動機に基づくものであったこと、しかし、その規模は小さく、アウトサイダー優位の構造には影響しないことが示される。次に、海外投資家については、その銘柄選択に、ホームバイアスと関連する特定の偏りがあることに加えて、企業統治要因も考慮されていたこと、さらに、海外投資家のプレゼンス上昇が、その銘柄選好を考慮しても、企業パフォーマンスの引き上げ効果を持ったことが明らかにされる。最後に、1990年代前半の企業規模、海外市場での名声、企業業績の差が、機関投資家の銘柄選好や企業の自己選択を介して株式所有構造の分化を生み、この所有構造の差が、それ自体の規律付け効果や経営組織改革の促進効果を通じて、パフォーマンス格差をさらに増幅するというダイナミックな関係が強調される。