価格決定力と生産性-サービス品質による差別化-

執筆者 児玉 直美  (コンサルティングフェロー) /加藤 篤行  (リサーチアソシエイト / アジア開発銀行研究所)
発行日/NO. 2010年12月  10-J-058
研究プロジェクト サービス産業生産性向上に関する研究
ダウンロード/関連リンク

概要

生産性推計に広く用いられている要素シェアアプローチでは、生産物(サービス)の無差別化、規模に関する収穫一定、生産物および生産要素に関する完全競争市場が仮定されている。本稿では、定性的なデータを用いて、生産物(サービス)の無差別化という強力な仮定をはずしたより現実に近い条件を与えたモデルに基づいて、TFPと価格決定力の関係性及び価格決定力に影響を及ぼす差別化要因の探索を行う。

本稿の分析から、要素シェアアプローチによるTFPには価格効果も含まれていること、価格の違いがサービス品質に起因していること、価格に反映できるサービス品質とは、ブランド、専門性、新規性、独創性であることが明らかにされた。また、サービス業も一様ではなく、サービス業の中でも、対個人サービスは、要素シェアアプローチによるTFPが生産効率の指標としての生産性を反映しているということができる。つまり、本稿の結果は、対個人サービスでは、要素シェアアプローチによる生産性推計結果を政策議論において直接用いることが可能であることを示している一方、対事業所サービスでは、差別化の源泉と考えられるバイアスについて注意深く吟味することが肝要であることを明らかにしている。