執筆者 |
増井良啓 (東京大学) |
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発行日/NO. | 2010年9月 10-J-051 |
研究プロジェクト | 通商関係条約と税制 |
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概要
本稿は、二国間租税条約の無差別条項が何のための規定であるかを考えるための、簡潔なレビュー論文である。Iで、二国間租税条約上の無差別条項を法体系の中に位置づける。しかるのち、IIで、OECDモデル租税条約24条を主な素材として、二国間租税条約上の無差別条項が具体的に何を定めるものであるかについて、条文の文言を読み解きながら概観する。これが本稿の本体部分であり、既存のルールにもれやギャップが存在することを論証する。最後に、IIIで租税条約締結ポリシーのあり方に触れる。既存のルールに不十分なところがあることから、現在、二国間租税条約上の無差別条項の適用範囲を拡大することがOECD等で検討されている。この点につき、国際所得課税の全体構想の一部としてこれを論ずるのでなければ、「暗闇への跳躍」に終わる危険が大きいことを指摘する。