議院内閣制の理念と実態―憲法学と政治学の間で―

執筆者 西垣 淳子  (上席研究員)
発行日/NO. 2010年8月  10-J-046
研究プロジェクト 90年代の統治構造改革と議院内閣制の変容に関する研究
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概要

90年代の統治構造改革の成果を踏まえ、我が国の議院内閣制の運用は大きく変容しつつある。そうした中で、憲法学でも議院内閣制の理想として志向すべきモデルをめぐってさまざまな議論が行われている。具体的には、90年代の改革の理念を共有する多数決型デモクラシーの方向性と、理念自体の見直しを提起する合意形成型デモクラシーを志向する方向性である。だが、いずれの理念を目指すにしても、実際の政権運用にあたっては国会と内閣との関係をいかに合理的に組織するかという視点が必要である。そして、議院内閣制の運用のあり方をイギリス型や、欧州大陸型と比較することによって、三権分立的な構想の下で議院内閣制の制度を設計してきた我が国の憲法規範の問題点を指摘し、そうした憲法規範の下での議論が、実際の議院内閣制の運用にあたって必要な検討課題を見過ごしてきた点を指摘する。そして、そうした課題は、国会法や内閣法という憲法付属法の改正によって対処できる範囲を超えつつあることを指摘し、憲法学が改めて議院内閣制の構造を検討する必要性を提示する。