執筆者 |
森川 正之 (副所長) |
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発行日/NO. | 2010年7月 10-J-042 |
研究プロジェクト | 少子高齢化時代の労働政策へ向けて:日本の労働市場に関する基礎研究 |
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概要
本稿は、雇用の不安定性やワーク・ライフ・バランスの欠如に対する補償賃金プレミアムとして、日本の労働者はどの程度の水準を妥当と考えているかについての観察事実を提示するとともに、仕事満足度に対する労働時間と賃金のトレードオフ関係を分析する。その結果、(1)雇用の不安定性、(2)仕事上の制約・拘束の代償として適正と考えられている補償賃金はいずれも10~20%程度である。企業業績のヴォラティリティが高まり非正規雇用への需要が高くなる中、不安定な雇用形態の労働者の相対賃金の妥当性には議論の余地がある。他方、たとえば短時間正社員制度が、強い雇用保障とワーク・ライフ・バランスをともに満たす仕組みだとすれば、▲10~▲20%程度の相対賃金ディスカウントを伴うことで労働者の公平感にも合致し、制度の導入・普及が進む可能性を示唆している。仕事満足度に対して労働時間は負、賃金は正の有意な影響を持っているが、男性では賃金の影響が大きく、労働時間短縮への選好が弱い。働き方の多様化を進める際、労働時間の柔軟化と賃金の柔軟化とをセットにして取り組むことが有効なことを示唆している。